DP2 Merrill * 昨日への電話

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    sigma dp2 merrill

    受話器を取って耳に当てる。重量のある受話器と耳にあたる感触。



     

    受話器からは何の音も聞こえないけど、耳に感じる受話器の感触に覚えがあった。

    まだ小学校の頃だろうか。住んでいた公団アパートの近くに小さなタクシー会社の支店があった。
    当時はタクシーに乗る機会なんかほとんどなかったけど、割と裕福だった叔母と出かけるときによく利用していた。

    タクシーを利用するときは、タクシー会社の駐車場まで歩いていく。で、そこに空車が停まっていれば、そのまま乗って行く
    けど、大体の場合はいない。その場合、駐車場の脇にある「電話」を使って呼び出す。

    このタクシー会社にあった電話は見た目は「黒電話」だけど、家庭にあるものと微妙に様相が違った。
    まず、ダイヤルがない。そして、電話機の右わきにクルクル回すレバーが付いている。
    おそらく、この電話はタクシー会社の本部へ繋がる専用線だったのだろう。叔母はいつも、僕に電話をかけさせていた。
    僕はこの不思議な電話が好きで、電話をかける前に右わきのレバーをぐるぐる回して、しばらくすると「もしもし」と
    受話器から声が聞こえることを喜んでいた。このグルグルは何だったんだろう。発電機の一種だろうか。
    黒い電話のグルグルを回しただけで、何で声が聞こえるのだろう。未知の機械に気分も高揚していた。

    目の前のピンクの電話は線も切れていて、勿論、ディスプレイ用みたいだけど、プッシュを押して、受話器を耳にあてると
    「もしもし」とタクシー会社のオペレータが出てきそう。それとも、ぐるぐるを回している少年の声が聞こえてくるのかな。



     
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